事業承継にかかる費用はどれくらい?手数料の料金相場や税金についても解説!

事業承継では、税金や手数料といった費用がかかるため、それらの出費の準備が必要です。そこで本コラムでは、事業承継でかかる税金の内容、手数料の料金相場などを解説するとともに、税金の節税が可能な特別税制や、費用削減・調達に役立つ補助金・融資なども紹介しています。

目次

  1. 事業承継の方法と費用
  2. 事業承継でかかる税金
  3. 事業承継にかかる税金を援助する制度
  4. 事業承継でかかる手数料
  5. 事業承継用補助金と融資
  6. 事業承継の相談先
  7. 事業承継の費用まとめ

事業承継の方法と費用

事業承継とは、中小企業や個人事業において、現経営者から後継者に会社の経営・事業の運営を引継ぐことです。具体的には、中小企業であれば自社株式を後継者に引渡し、個人事業であれば事業用資産を後継者に引渡します。

事業承継は、後継者を誰にするかによって3つの方法があり、その分類は以下のとおりです。

  • 親族内事業承継
  • 社内事業承継
  • M&Aによる事業承継

それぞれの事業承継方法の概要・違いを説明するとともに、各事業承継方法でかかる税金や手数料などの費用を一覧で紹介します。なお、各費用の詳細は後述いたしますので、そちらをご覧ください。

親族内事業承継とは

現経営者の親族が後継者となるのが、親族内事業承継です。親族の中でも、経営者の子どもが後継者となることが最も多いでしょう。親族内事業承継は、過去には広く行われてきましたが、現在は減少傾向にあります。その理由は主に以下の4点です。

  • 子どもが後継者になることを親(現経営者)が無理強いしなくなった
  • 親の後を継ごうとする子どもが減った
  • 少子化により子どもの数が減った
  • 相続税・贈与税の負担が大きいため後継者になるのをためらう

事業承継のために相続・受贈した資産は、経営のために保持しておく必要があり、他の資産のように税金対策として売却できません。そのため、事業承継する後継者の税金負担は通常より重くなります。

親族内事業承継にかかる費用一覧

親族内事業承継でかかる税金や手数料などの費用には、以下のようなものがあります。

相続税

後継者が相続で事業承継した場合の税金

贈与税

後継者が生前贈与を受けて事業承継した場合の税金

弁護士手数料

遺言書の作成を依頼した場合の料金

司法書士手数料

遺言書の作成を依頼した場合の料金

税理士手数料

税金納付に関する業務を依頼した場合の料金

利息

税金納付のために借金した場合の利子

社内事業承継とは

社内の役員や従業員が後継者となるのが、社内事業承継です。従来から親族に後継者がいない場合の事業承継方法として用いられてきましたが、現在はその傾向がより顕著になっています。一部の調査では、現在、社内事業承継が最も多用されているという調査結果もあるほどです。

社内事業承継では、後継者は自社株式または事業用資産を現経営者から買取る必要があります。買取額は相応の金額となるため、後継者はその資金を用意しなければなりません。

資金が用意できない場合、後継者を辞退するケースもあります。あるいは現経営者が、無償譲渡または格安譲渡することで事業承継の実現を図るケースもあるでしょう。

社内事業承継にかかる費用一覧

社内事業承継でかかる税金や手数料などの費用には、以下のようなものがあります。

買取り資金

後継者が自社株式・事業用資産を買取るため

贈与税

後継者が無償譲渡・格安譲渡を受けて事業承継した場合の税金

所得税

自社株式・事業用資産の売却益にかかる税金

復興特別所得税

自社株式・事業用資産の売却益にかかる税金

住民税

自社株式・事業用資産の売却益にかかる税金

消費税

事業用資産に消費税課税資産が含まれている場合にかかる税金

不動産取得税

事業用資産に不動産が含まれている場合にかかる税金

登録免許税

事業用資産に不動産が含まれている場合にかかる税金

公認会計士手数料

自社株式・事業用資産の売買金額査定を依頼した場合の料金

M&Aアドバイザー手数料

自社株式・事業用資産の売買金額査定を依頼した場合の料金

税理士手数料

税金納付に関する業務を依頼した場合の料金

利息

自社株式・事業用資産買取り資金または税金納付のために借金した場合の利子

現経営者が後継者に自社株式または事業用資産を格安譲渡した場合、本来の時価と譲渡額との差額分は贈与を受けたとみなされ、贈与税が課されます。

M&Aによる事業承継とは

親族や社内に後継者がいない場合に、自社株式または事業用資産を第三者に売却するのがM&Aによる事業承継です。M&Aの買収側が新たな経営者(後継者)になることで、会社・事業は継続されます。従来は親族や社内に後継者がいない場合、廃業してしまう中小企業・個人事業主も多くいました。

その傾向が続けば、地域経済・地域社会、ひいては日本経済全体を揺るがすことにもなりかねません。そこで、国がM&Aによる事業承継を奨励・啓蒙したこともあり、近年、M&Aによる事業承継も増えてきています。

M&Aによる事業承継にかかる費用一覧

M&Aによる事業承継でかかる税金や手数料などの費用には、以下のようなものがあります。

買収費用

M&Aの買収側が支払う対価

所得税

自社株式・事業用資産の売却益にかかる税金

復興特別所得税

自社株式・事業用資産の売却益にかかる税金

住民税

自社株式・事業用資産の売却益にかかる税金

消費税

事業用資産に消費税課税資産が含まれている場合にかかる税金

不動産取得税

事業用資産に不動産が含まれている場合にかかる税金

登録免許税

事業用資産に不動産が含まれている場合にかかる税金

M&Aアドバイザー手数料

M&A仲介業務を依頼した場合の料金

公認会計士手数料

各種業務を依頼した場合の料金

税理士手数料

各種業務を依頼した場合の料金

弁護士手数料

各種業務を依頼した場合の料金

利息

M&A買収費用のために借金した場合の利子

以下の動画では、3種類の事業承継方法の解説をしています。ご参考までご覧ください。

以下の動画では、親族内事業承継とM&Aによる事業承継の比較解説をしています。ご参考までご覧ください。

事業承継でかかる税金

事業承継でかかる税金一覧は以下のとおりです。

  • 相続税
  • 贈与税
  • 所得税
  • 復興特別所得税
  • 住民税
  • 法人税
  • 消費税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税

以上の税金は、全ての事業承継方法に共通でかかる税金ではありません。各税金の課税内容とともに、どの事業承継方法でかかる税金であるかなどについて説明します。なお、税金の課税内容に関する記述は、2024(令和6)年3月現在のものです。

相続税

相続税は、死亡した被相続人から財産を相続した者(相続人)に課される税金です。親族内事業承継で発生する可能性があります。相続税では、まず、全体の基礎控除額を以下のように計算します。

  • 相続税の基礎控除額=600万円×法定相続人数+3,000万円

相続税は、相続した財産を全て金額に換算して課税を受けます。相続した金額によって税率が異なるため、注意が必要です。相続税の税率と控除額は以下のようになっています。

基礎控除後の課税金額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

1,000万円超~3,000万円

15%

50万円

3,000万円超~5,000万円

20%

200万円

5,000万円超~1億円

30%

700万円

1億円超~2億円

40%

1,700万円

2億円超~3億円

45%

2,700万円

3億円超~6億円

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

相続人が何人いるかによって、相続の割合は変わります。また、基礎控除額以外にも控除される費用が複数あるため、相続税額の正確な計算は複雑です。税額計算にあたっては、税理士に相談するとよいでしょう。

贈与税

贈与税は、他者から贈与を受けた場合に課される税金です。親族内事業承継、社内事業承継で発生する可能性があります。贈与税には以下の2種類の納税方法があり、該当者は選択しなければなりません。

  • 暦年課税
  • 相続時精算課税

該当者が納税方法として相続時精算課税を選択した場合、暦年課税には戻せません。その点は注意が必要です。それぞれの納税方法を説明します。

暦年課税

贈与税の暦年課税では、その年の1月から12月の1年間ごとに区切り、贈与を受けた者に対し税金が課されます。毎年、110万円までが基礎控除額です。

贈与税も、贈与された金額によって税率が異なります。さらに、税率設定は特例税率と一般税率の2種類があり、注意が必要です。まず、特例税率は以下のようになっています。

基礎控除後の課税金額<特例税率>

税率

控除額

200万円以下

10%

200万円超~400万円

15%

10万円

400万円超~600万円

20%

30万円

600万円超~1,000万円

30%

90万円

1,000万円超~1,500万円

40%

190万円

1,500万円超~3,000万円

45%

265万円

3,000万円超~4,500万円

50%

415万円

4,500万円超

55%

640万円

次に、暦年課税の一般税率を掲示します。特例税率よりも一般税率の方が、税金が高くなる設定です。

基礎控除後の課税金額<一般税率>

税率

控除額

200万円以下

10%

200万円超~300万円

15%

10万円

300万円超~400万円

20%

25万円

400万円超~600万円

30%

65万円

600万円超~1,000万円

40%

125万円

1,000万円超~1,500万円

45%

175万円

1,500万円超~3,000万円

50%

250万円

3,000万円超

55%

400万円

贈与税の暦年課税で特例税率が認められるのは、18歳以上の成人が祖父母・父母から贈与を受けた場合です。

相続時精算課税

相続税の相続時精算課税とは、18歳以上の成人が祖父母・父母から贈与を受けた場合、2,500万円までは贈与税を非課税とする代わりに、贈与者が死亡した際に相続税の対象資産として計算される制度です。2,500万円超の部分には、税率20%の贈与税がかかります。

納税時期を先延ばしできる点はメリットともいえますが、贈与税と相続税の計算方法は異なるため、納税額がどちらが有利かは細かく計算しないと分かりません。

所得税・復興特別所得税・住民税

所得税・復興特別所得税・住民税は、社内事業承継またはM&Aによる事業承継を行った場合の先代経営者にかかる税金です。これら3つの税金は、株式譲渡をしたか事業譲渡をしたか、事業譲渡で売却した資産の種類は何かによって、以下のように課税内容が異なります。

  • 株式売却益にかかる税金
  • 不動産売却益にかかる税金
  • その他の資産売却益にかかる税金

それぞれの税金がかかる内容の違いを説明します。

株式売却益にかかる税金

中小企業経営者が所有する自社株式を、後継者またはM&Aの買収側に売却して得た利益(税法では株式譲渡所得という)には税金がかかります。株式売却益の計算方法は以下のとおりです。

  • 株式売却益=株式譲渡対価-株式取得費用-M&Aアドバイザー費用

株式売却益にかかる税金は分離課税扱いとなっており、その税率は以下のように固定されています。

  • 所得税:15%
  • 復興特別所得税:0.315%
  • 住民税:5%
  • (合計:20.315%)

復興特別所得税は期限付きの税金で、2037(令和19)年までの期限です。

不動産売却益にかかる税金

個人事業主が後継者またはM&Aの買収側に、事業用資産である不動産を売却して得た利益にかかる税金は分離課税です。対象不動産の所有年数によって、税率が2種類に分けられています。まず、不動産の所有年数が5年超の場合の売却益は長期譲渡所得と呼ばれ、税金・税率は以下のとおりです。

  • 所得税:15%
  • 復興特別所得税:0.315%
  • 住民税:5%
  • (合計:20.315%)

一方、不動産の所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得といわれ、税金・税率は以下のとおりです。

  • 所得税:30%
  • 復興特別所得税:0.63%
  • 住民税:9%
  • (合計:39.63%)

短期譲渡所得への税率が高いのは、不動産を転売して利益を得る行為を抑制する狙いがあります。

その他の資産売却益にかかる税金

個人事業主が不動産以外の事業用資産を、後継者またはM&Aの買収側に売却して得た利益にかかる税金は総合課税です。その年の他の所得と合算して課税を受けます。以下は、総合課税での基礎控除額です。

所得額

控除額

2,400万円以下

48万円

2,400万円超~2,450万円

32万円

2,450万円超~2,500万円

16万円

2,500万円超

0円

総合課税における所得税は、以下のとおり累進税率です。

基礎控除後の課税金額

税率

控除額

1,000円~194万9,000円

5%

195万円~329万9,000円

10%

9万7,500円

330万円~694万9,000円

20%

42万7,500円

695万円~899万9,000円

23%

63万6,000円

900万円~1,799万9,000円

33%

153万6,000円

1,800万円~3,999万9,000円

40%

279万6,000円

4,000万円以上

45%

479万6,000円

さらに総合課税では、所得税の税率の2.1%相当分が復興特別所得税として、住民税10%とともに課税されます。

法人税

社内事業承継またはM&Aによる事業承継を実施する中小企業が、自社株式は売却せず事業譲渡(事業用資産の売却)を行う場合、または対象事業部門を子会社として独立させ、その子会社株式を売却した場合に得た利益は、法人税の対象です。法人税には以下の種類があります。

  • 法人税
  • 法人事業税
  • 特別法人事業税
  • 地方法人税
  • 法人住民税

これらの法人税の税率や課税計算方法は異なります。実効税率としてそれらを累算すると、約31~34%の税率です。また、法人税は他の損益を通算した金額に課されます。損益通算後が赤字であれば課税を受けません。

消費税

社内事業承継、M&Aによる事業承継が事業譲渡で行われる場合、買収した資産が消費税課税資産であれば、後継者またはM&Aの買収側は消費税(10%)を負担しなければなりません。消費税課税資産とは以下のものです。

  • 土地以外の有形固定資産
  • 無形固定資産
  • 棚卸資産
  • のれん

消費税は事業譲渡の対価を支払う際に一緒に渡すため、その分の資金繰りも必要です。

以下の動画では、のれんの解説をしています。ご参考までご覧ください。

不動産取得税

社内事業承継、M&Aによる事業承継が事業譲渡で行われる場合、買収した資産の中に不動産があれば、後継者またはM&Aの買収側は不動産取得税を納付しなければなりません。不動産取得税の課税内容は以下のとおりです。

  • 土地・住宅:固定資産税評価額×3%
  • 住宅以外の建物:固定資産税評価額×4%

固定資産税評価額は、固定資産税の納付通知書で確認できます。

登録免許税

社内事業承継、M&Aによる事業承継が事業譲渡で行われる場合、買収した資産の中に不動産があれば、後継者またはM&Aの買収側は登記変更手続きを行う必要があります。その際に納付するのが登録免許税です。登録免許税の課税内容は以下のようになっています。

  • 土地:固定資産税評価額×1.5%
  • 建物:固定資産税評価額×2%

以下の動画では、M&Aによる事業承継でかかる税金の解説をしています。ご参考までご覧ください。

事業承継にかかる税金を援助する制度

国は、中小企業・個人事業主の事業承継をできるだけ実施しやすくするために、事業承継でかかる税金の負担を減らす制度を複数導入しています。それらの名称は以下のとおりです。

  • 法人版事業承継税制(特例措置)
  • 法人版事業承継税制(一般措置)
  • 個人版事業承継税制
  • 登録免許税・不動産取得税の特例
  • 経営資源集約化税制

各制度の概要を説明します。なお、各制度の内容は2024年3月現在のものです。

法人版事業承継税制(特例措置)

事業承継税制とは、事業承継の結果、生じた贈与税や相続税の納税が猶予および免除される制度です。親族内事業承継だけでなく社内事業承継であっても、先代経営者から後継者に自社株式や事業用資産の贈与や遺言書による相続があれば、対象となります。

ただし制度の適用を受けるには、一定の条件を満たしていることと、それらを維持すること、そして申請手続きが欠かせません。事業承継税制は企業向けと個人事業向けに分かれており、さらに企業向けには特例措置と一般措置の2種類があります。

この特例措置は期限が定められており、制度の運用は2027(令和9)年までですが、そのために必要な特例承認計画の提出が2024年3月31日までです。本コラムの掲載時期には期限が過ぎてしまっていることから、詳細説明は割愛します。

法人版事業承継税制(一般措置)

事業承継税制の適用を受ける前提条件として、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」に基づく都道府県知事の認定を受けなければなりません。そのうえで、事業承継税制の適用を受ける旨を各税金の申告書に記載します。

また、納税が猶予された後、さらに納税が免除される条件は以下のとおりです。

  • 後継者の死亡
  • 会社の倒産
  • 次世代の後継者への自社株式・事業用資産の贈与
  • 先代経営者の死亡(贈与税の場合)

納税の免除を受ける際には、免除申請書・免除届出書の提出手続きが必要です。

個人版事業承継税制

個人版事業承継税制も法人版事業承継税制と同様の贈与税・相続税の猶予・免除を得られますが、現在のところ2028(令和10)年までの限定措置となっています。また、適用を受ける前提となる、個人事業承継計画の提出期限が2024年3月31日です。

本コラムが掲載される時期には個人事業承継計画の提出期限が過ぎてしまっているため、詳細説明は割愛します。

登録免許税・不動産取得税の特例

M&Aスキーム(手法)のうち事業譲渡、会社分割、合併を行った場合、譲渡資産の中に不動産があると買収側には不動産取得税と登録免許税が課されます。この税金の発生は、M&Aによる事業承継だけでなく、社内事業承継でも起こり得るでしょう。

登録免許税・不動産取得税の特例は、その際の税率が軽減されるものです。ただし、中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を、2024年3月31日までに受けていなければなりません。本コラムの掲載時期には認定期限が過ぎてしまっているため、詳細説明は割愛します。

経営資源集約化税制

経営資源集約化税制は、M&Aによる事業承継の買収側企業にかかる税金負担を軽減する目的の制度です。経営資源集約化税制は以下の2つの内容で構成されています。

  • 設備投資減税
  • 中小企業事業再編投資損失準備金

設備投資減税

設備投資減税とは、中小企業経営強化税制とも呼ばれています。設備投資減税では、経営力向上計画に基づいてM&A後に設備を取得した際、投資額の10%の税額控除か全額即時償却のどちらかの減税措置を得られるものです。

ただし、各管轄官庁に対し、事前に経営力向上計画を提出し認定されていなければなりません。また、現状では2025(令和7)年3月31日までの投資期限です。なお、対象企業の資本金額が3,000万円超の場合、税額控除は投資額の7%までになります。

中小企業事業再編投資損失準備金

中小企業事業再編投資損失準備金は、M&Aスキームの株式譲渡を行った場合限定の準備金積立制度です。準備金(株式譲渡対価の70%相当額)は損金に算入できるため、減税効果が得られます。

ただし、積立期間は5年間限定で、6年目以降の5年間に、それまで損金算入した金額と同額の益金算入を行わなければなりません。したがって、実際には減税措置ではなく期間限定の税金納付の猶予措置です。

また、この措置を受けるためには、2024年3月31日までに経営力向上計画の認定が必要になります。なお、令和6年度税制改正案にて、この制度の期間延長および内容拡充が審議される予定です。

事業承継でかかる手数料

事業承継を実施する際、税理士や弁護士などの士業事務所や、M&Aアドバイザーや経営コンサルティングなどの専門会社へ業務を依頼すると発生するのが手数料です。ここでは、以下の4種の専門家における手数料の料金相場を紹介します。

  • 税理士・公認会計士の料金相場
  • 弁護士の料金相場
  • M&Aアドバイザーの料金相場
  • コンサルティングの料金相場

各専門家に依頼できる業務とその料金相場を掲示します。

税理士・公認会計士の料金相場

税理士・公認会計士に依頼できる事業承継関連業務と、その費用相場例は以下のとおりです。

  • 初期相談費用:ほとんど無料だが有料のケースもあるため事前確認が必要
  • 顧問契約費用:10万円~/月、契約業務内容により金額は変動
  • 税額計算・納税申告書作成費用:10万円~
  • 事業承継税制への対応費用:50万円~
  • 自社株式または事業用資産の金額算定費用:10万円~、算定規模により金額は変動
  • M&A仲介手数料:M&A対価の5~10%

記載した費用相場はあくまでも一例です。業務を依頼する前に見積もりを取って確認しましょう。また、全ての税理士・公認会計士がM&A仲介業務を行っているわけではありません。実績を確認する必要があります。

弁護士の料金相場

続いて、事業承継に関する業務を弁護士に依頼した場合の費用相場例を、具体的な業務とともに紹介します。

  • 初期相談費用:無料、または5,000円~
  • 顧問契約費用:10万円~/月、契約業務内容により金額は変動
  • 遺言書作成費用:30万円~
  • M&A仲介手数料:M&A対価の5~10%

記載した費用相場はあくまでも一例です。業務を依頼する前に見積もりを取って確認しましょう。また、全ての弁護士がM&A仲介業務を行っているわけではありません。実績を確認する必要があります。

M&Aアドバイザーの料金相場

事業承継に関する業務をM&Aアドバイザーに依頼した場合の費用相場例を、具体的な業務とともに紹介します。

  • 初期相談費用:ほとんど無料だが有料のケースもあるため事前確認が必要
  • 自社株式または事業用資産の金額算定費用:10万円~、算定規模により金額は変動
  • M&A仲介手数料:M&A対価の5%

記載した費用相場はあくまでも一例です。業務を依頼する前に見積もりを取って確認しましょう。M&A仲介手数料は、最低報酬額が設定されている場合があります。対価の5%が最低報酬額よりも低い場合は、最低報酬額が手数料です。

以下の動画では、M&Aによる事業承継でかかる手数料の解説をしています。ご参考までご覧ください。

コンサルティングの料金相場

コンサルティングに依頼できる事業承継関連業務と、その費用相場例は以下のとおりです。

  • 初期相談費用:無料または5,000円~
  • 顧問契約費用:20万円~/月、契約業務内容により金額は変動
  • 税金対策費用:20万円~
  • 経営コンサルティング費用:50万円~
  • 自社株式または事業用資産の金額算定費用:20万円~
  • M&A仲介手数料:M&A対価の5~10%

記載した費用相場はあくまでも一例です。業務を依頼する前に見積もりを取って確認しましょう。また、全てのコンサルティングがM&A仲介業務を行っているわけではありません。実績を確認する必要があります。

事業承継用補助金と融資

ここでは、事業承継に関する公的補助金と、事業承継向け融資として、それぞれ以下のものを取りあげます。

  • 事業承継・引継ぎ補助金
  • 事業承継・集約・活性化支援資金

事業承継向け補助金と融資の内容を確認しましょう。

事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業庁が管轄している補助金です。補助金ですから、返済の必要はありません。ただし、申請し審査で認められなければ交付を受けられません。申請は全てオンラインで行う仕組みです。

事業承継・引継ぎ補助金は、以下の3つのカテゴリーに分かれています。

  • 経営革新補助金
  • 専門家活用補助金
  • 廃業・再チャレンジ補助金

それぞれのカテゴリーの内容を説明します。

経営革新補助金

経営革新補助金は、事業承継をきっかけとして経営上の新たな取組や投資を行った場合、およびそれらを行う計画がある場合に申請できる補助金です。経営革新補助金には以下の3種の類型があります。

  • Ⅰ型:創業支援型
  • Ⅱ型:経営者交代型
  • Ⅲ型:M&A型

上記の各類型には、それぞれ複数の要件が定められています。申請時は、それらの要件全てを満たしていなければなりません。また、申請手続きは類型ごとに分かれています。

経営革新補助金の具体的な交付内容は以下のとおりです。

  • 補助上限額:800万円(賃上げを実施した場合、対象費用の2分の1以内)
  • 補助上限額:600万円(賃上げしない場合、対象費用の2分の1または3分の2以内)
  • 補助下限額:100万円

補助上限額が600万円のケースで、小規模企業者・営業利益率低下・赤字決算・再生事業者のいずれかに該当する場合は、対象費用の補助率が3分の2に上がります。また、経営革新補助金は、廃業・再チャレンジ補助金との重複申請が可能です。その場合は、上限額が150万円アップします。

専門家活用補助金

専門家活用補助金は、M&Aによる事業承継を実施した場合に発生する、専門家への手数料を補助するものです。買収側・売却側どちらも対象であり、類型も以下の2つがあります。

  • Ⅰ型:買い手支援型
  • Ⅱ型:売り手支援型

それぞれの類型により要件は異なるため、確認が必要です。

また、ここでいう「専門家」とはM&A仲介会社や士業事務所などのM&A支援機関を指しています。専門家活用補助金の対象となるのは、中小企業庁が行っているM&A支援機関登録制度に登録されている専門家に支払った手数料に限定されるため注意しましょう。

専門家活用補助金の具体的な内容は以下のようになっています。

  • 買い手支援型補助上限額:600万円(対象費用の3分の2以内)
  • 売り手支援型補助上限額:600万円(対象費用の2分の1または3分の2以内)
  • 補助下限額:50万円

売り手支援型補助上限額は、申請企業において物価高の影響で営業利益率が低下している場合、あるいは直近決算の営業利益か経常利益が赤字の場合、補助率が2分の1から3分の2に引き上げられます。

また、専門家活用補助金は、廃業・再チャレンジ補助金との重複申請が認められており、その場合は上限額が150万円アップする仕組みです。

M&A支援機関登録制度

中小企業庁では、インターネット上に「M&A支援機関登録制度」というウェブサイトを開設しています。サイト内には、登録支援機関データベースが設けられており、いつでも検索・閲覧が可能です。

データベースに登録されているM&A支援機関は、中小企業庁が定めた「中小M&Aガイドライン」の順守を約定したうえで申請し、中小企業に認められた機関です。2024年3月現在、3,123機関が登録されています。

ご参考:M&A支援機関登録制度

廃業・再チャレンジ補助金

廃業・再チャレンジ補助金は、現在の事業を廃業したうえで、その後、新たに事業を始める際の廃業経費に対する補助金です。廃業・再チャレンジ補助金は、以下のケースでは他の補助金との併用申請ができます。

  • 事業承継またはM&Aによる事業譲受後の廃業は経営革新補助金との併用申請が可能
  • M&Aによる事業譲渡または譲受後の廃業は専門家活用補助金との併用申請が可能

廃業・再チャレンジ補助金の具体的な内容は以下のとおりです。

  • 補助上限額:150万円(対象費用の3分の2以内)
  • 補助下限額:50万円

併用申請の補助上限額の補助率は、経営革新補助金または専門家活用補助金の補助率が2分の1の場合、廃業・再チャレンジ補助金の補助率も2分の1になります。

ご参考:事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・集約・活性化支援資金

事業承継・集約・活性化支援資金は、政府系金融機関(日本政府が全株式所有)である日本政策金融公庫が行っている事業承継向けの融資です。事業承継時に行う設備投資費や運転資金に対して融資を受けられます。

個人事業主や小規模企業向けは国民生活事業、中小企業向けには中小企業事業という分類があり、それぞれの融資上限額は以下のとおりです。

  • 国民生活事業:別枠7,200万円(運転資金は4,800万円まで)
  • 中小企業事業:直接貸付14億4,000万円

どちらも返済期間は、設備資金の場合20年以内、運転資金の場合10年以内ですが、両者とも5年以内の据置期間設定が可能です。なお、掲載した情報は2024年3月現在のものであり、今後、条件が変わる場合もあります。

ご参考:事業承継・集約・活性化支援資金

事業承継の相談先

事業承継を社内だけで進めるのが困難な場合、その相談先あるいは業務の依頼先として、以下のような機関があります。

  • 事業承継・引継ぎ支援センター
  • 商工団体
  • 金融機関
  • 士業事務所
  • M&A仲介会社
  • コンサルティング会社

それぞれの機関の概要を説明します。

事業承継・引継ぎ支援センター

各都道府県に設けられている事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業の事業承継を専門的にサポート・支援する目的の公的機関です。無料で気兼ねなく相談できます。

ただし、M&Aの仲介は行っていません。その代わり、独自のサポートとして後継者人材バンクがあります。後継者のいない中小企業に対し、個人の起業家をマッチングして事業承継実現をサポートするものです。

商工団体

中小企業団体中央会、商工会、商工会議所などの商工団体でも、事業承継の相談ができます。そのためには、入会費と年会費を支払って会員になることが必要です。

また、初期の相談には向いていますが、事業承継・引継ぎ支援センターのような事業承継が実現するまでのサポート・支援は受けられません。

金融機関

M&Aによる事業承継の相談であれば、銀行、証券会社、信用金庫などの金融機関でも可能です。

ただし、その中でメガバンクや証券会社の場合は、大企業のM&Aサポートが中心であるため、中小企業のM&Aの相談には適しません。また、金融機関の全支店がM&Aサポートを行っているわけではないことも注意点です。

士業事務所

親族内事業承継、社内事業承継、M&Aによる事業承継のいずれにおいても、士業事務所に相談できる業務は多々あります。特に顧問契約をしている士業事務所があるのであれば、事業の実情に沿った対応やアドバイスが得られるでしょう。

ただし、M&Aサポートについては対応していない士業事務所も多く、その場合は相談できません。

M&A仲介会社

M&Aによる事業承継の際のベーシックな相談先は、M&A仲介会社です。M&Aの専門業者ですから、先述した中小企業庁のM&A支援機関データベースにも、数多くのM&A仲介会社が登録されています。

近年の傾向として、M&A仲介会社には税理士、公認会計士、弁護士が在籍していることも多いため、親族内事業承継や社内事業承継の相談も無料で対応可能です。

コンサルティング会社

コンサルティングは、それぞれの会社によってさまざまな分野のコンサルを行っているのが現状です。経営コンサルティングの一環として事業承継のサポートを行っているケースもあれば、事業承継を専門にコンサルティングしているケースもあります。

コンサルティングの傾向としては、他の相談先よりも費用が高めであることです。

事業承継の費用まとめ

親族内事業承継、社内事業承継、M&Aによる事業承継のいずれにおいても、何らかの費用が発生します。事業承継の実施にあたっては、どのタイミングでどの程度の費用がかかるのか、概要をおさえておきたいものです。

また、事業承継で発生する税金には優遇措置があり、投資費用や各種手数料などには補助金制度があります。事業承継で発生する費用をできるだけ節約するため、各制度の把握も欠かせません。

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