事業売却の手続きの流れを分かりやすく解説!目的やメリット・注意点は?

この記事では、M&Aを事業売却で行う場合に必要な手続きと流れを中心に解説します。円滑に事業売却を進めるためには、手続きの流れの把握と慎重な準備が欠かせません。目的やメリット、注意点も踏まえながら事業売却について理解しましょう。

目次

  1. 事業売却とは
  2. 事業売却の手続き方法と流れ
  3. 事業売却の目的
  4. 事業売却のメリット
  5. 事業売却を行うときの注意点
  6. 事業売却はしっかりとした準備のもと行おう

事業売却とは

まずは、事業売却に関する基本的な知識を押さえましょう。

ここでは事業売却の意味と、会社売却の違いを解説します。

事業売却は、M&Aを実施する上で重要な手法です。

事業の全部または一部を第三者に売却する手法

事業売却とは、会社が保有する事業を第三者に売却するM&Aの手法の1つです。

事業は全部または一部が売却され、それに伴って発生する対価は、売却する側の利益として計算されます。

事業のみならず、会社が持つブランドといった見えない資産や負債も対象となるのが特徴です。

会社がより力を入れたい分野に集中するために、利益が得られにくい事業を売却するなどあらゆる場面で活用される方法です。

新規事業開拓などのプランがあれば、事業売却で資金を得られるでしょう。

事業売却と会社売却の違い

では、事業売却はどのような点で会社売却と異なるのでしょうか。

大きな違いは、会社経営権が移行するかどうかという点です。

会社売却は、会社自体を売却する手続きなので、会社経営権も引き継がれます。

例えば、会社売却を株式譲渡の方法で行う場合、買い手は株主となるため、会社経営者になるということです。

これに対し事業売却は、全部(一部)の事業に焦点を当てた売却手続きなので、経営権は移行しません。

似たような用語ですが、M&Aで活用される際の目的は異なります。

事業売却の手続き方法と流れ

ここでは、事業売却の手続き方法と流れを確認しましょう。

事業売却は、以下のようなプロセスで行われるのが一般的です。

時間と労力を要する場面が多々あるので、事前準備をしっかり行ってからM&Aを進めると良いでしょう。

  1. 売却先を探す
  2. M&A仲介会社に相談・依頼
  3. 買い手側による条件提示・基本合意
  4. デューデリジェンス(DD)
  5. 取締役会での決議
  6. 事業譲渡契約書の締結
  7. 報告書の提出・届け出
  8. 株式総会での説明
  9. 各種手続き・許認可の取得

売却先を探す

事業売却の手続き方法の流れの中で最初に位置するのが、売却先を探すことです。

売却先が見つからないと、具体的な売却プランが立てられません。

自社の事業の買い手としてふさわしい会社を見つけましょう。

個人の力で探すのも選択肢の1つですが、会社のネットワークや知識が豊富な仲介会社など専門家に相談するのも有益です。

M&A仲介会社に相談・依頼

次の流れはM&A仲介会社への相談・依頼です。

上でも記載しましたが、効率的に事業売却先を見つけたい場合は、M&A仲介会社を活用する方法が望ましいとされています。

事業売却の候補となる会社を1つずつ当たっていく方法だと、非常に労力がかかる上、リスクもあるかもしれません。

ただし、M&A仲介会社によって得意とする分野が異なります。選ぶ際は慎重に行いましょう。

買い手側による条件提示・基本合意

事業売却先が見つかったら、次の流れは買い手側による条件提示と基本合意です。

買い手は意向表明書と呼ばれる書類を作成し、売り手となる会社に提出します。

意向表明書は、事業を購入する意思のほかに金額やその他の条件が記載される書類です。

売り手が条件に合意できたら、基本合意書を作成し、契約内容を経営者同士で決めます。

このプロセスを行う前に秘密保持契約書を取り交わし、情報漏えい対策が取られるのが一般的です。

デューデリジェンス(DD)

次の流れはデューデリジェンス(DD)です。

デューデリジェンスとは、会社の財務や法務、事業から税務まであらゆる角度から調査することをいいます。

デューデリジェンスでは、より効果的なM&Aにするため、さまざまな資料を基に会社のリスクや価値などを分析し、実態把握を行います。

このプロセスは、買い手側企業にとって非常に重要なプロセスです。

取締役会での決議

デューデリジェンスが終わったら、次の流れは取締役会です。

売り手側企業は取締役会を開催し、役員から事業売却の承認を得なければなりません。

取締役会で決議されたら、本格的な事業売却手続きに進められます。

事業譲渡契約書の締結

取締役会後の流れとして次に行われるのが、事業譲渡契約書の締結です。

事業譲渡契約書の締結は、今回紹介している流れの中で特に需要なプロセスとい えます。 

売り手と買い手双方が合意できる最終的な契約内容を作成しましょう。

契約後のトラブルを最小限に抑えるために、契約内容を明確かつ詳細に記載するのがポイントです。

報告書の提出・届け出

次の手続きの流れは、報告書の提出と届け出です。

事業譲渡の内容をまとめた報告書は、その後の会社経営にとって重要な書類となるでしょう。

今回の事業売却が独占禁止法の届け出要件に該当する場合は、公正取引委員会に所定の方法で届け出を提出しなければなりません。

株式総会での説明

次の流れは株主総会での説明です。

必要書類の提出や届け出が済んだら、会社は株主総会を開催し、事業売却について株主に説明します。

特別決議では、3分の2以上の賛成を得なければなりません。

ただし、買い手が親会社の場合など特別決議を要しないケースもあります。

各種手続き・許認可の取得

事業売却手続き方法の流れの最後に位置するのが、各種手続きと許認可取得です。

この時点で会社保有の財産や契約、負債などの移行手続きを行います。

M&Aを事業売却の方法で行った場合、会社が保有していた許認可が引き継がれません。

売却後に買い手は、各所に許認可申請を提出する作業が必要です。

許認可取得にかかる時間なども考慮した上で、計画的に手続きを進めると良いでしょう。

事業売却の目的

ここでは、M&Aで事業売却を行う目的を解説します。

事業売却は、経営者の意思や会社の状況によって異なりますが、一般的に以下のような目的で行われることが多くあります。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

  • 創業者利益の獲得
  • 会社の成長
  • 業績不振の解消
  • 後継者不在の解消

創業者利益の獲得

事業売却は、創業者が利益を得られます。

創業者が新しいビジネス展開を検討している場合、事業売却は選択肢に挙がるでしょう。

新しいビジネスを立ち上げるには、ある程度資金が必要です。

この資金を集める目的で、創業者は事業売却を考えることがあります。

会社の成長

創業者が今ある会社を成長させたい場合も、事業売却の目的となり得ます。

創業者自身が引退した後も、自社の事業を輝かせ続けたいと考える方は多いでしょう。

慎重に売却先を見つけ、信頼できる会社に事業売却できれば、その事業は生き続けます。

場合によっては、売却先で大きく飛躍するビジネスになるかもしれません。

業績不振の解消

事業売却は必ずしも、プラスの状況で行われるわけではありません。

会社が業績不振の場合、将来的な倒産リスクを考えて事業売却でM&Aを行うこともあります。

ただ、業績悪化で大きな負債を抱えてからでは売却がうまく進められない可能性が高くなります。

できるだけ早いタイミングでM&A仲介会社などに相談し、売却計画を考えると良いでしょう。

後継者不在の解消

地方の中小企業では、後継者不在のためM&Aを考えざるを得ない状況が増えています。

後継者不在のままでは、会社は廃業せざるを得ません。従業員も失業するなど、さまざまなリスクがあります。

事業売却によるM&Aで後継者を見つけたいと考える経営者は、多くあります。

事業売却のメリット

ここでは、M&Aで事業売却を考えるメリットを解説します。

一般的に挙げられる事業売却の主なメリットは、以下の5つです。

ただし、会社の状況によって異なる部分もあるので、必ずしも全てのメリットが得られるわけではありません。

後ほど解説する注意点の箇所も、併せて確認することをおすすめします。

では、メリットを雇用や利益、手続きの効率化などさまざまな角度から解説します。

  • 資産や雇用の維持
  • 会社の商号の継続使用が可能
  • 売却益が得られる
  • 債権者への通知・公告が不要
  • 必要な事業だけに絞れる

資産や雇用の維持

1つ目のメリットは、資産や雇用が維持できる点です。

創業者が引退を理由に廃業してしまえば、従業員も今ある職を去らなければなりません。

廃業は負債が残ったり、お金の負担が必要だったりとデメリットが多い場合があります。

事業売却なら、大きな負担をかけずに会社が築き上げてきたものや従業員の生活まで守れます。

会社の商号の継続使用が可能

2つ目のメリットは、会社の商号を継続して使用できることです。

売り手企業が築き上げてきたブランドという見えない価値をそのまま引き継げます。

価値ある商号を活用すれば、ビジネス展開も円滑に進められるかもしれません。

売却益が得られる

3つ目のメリットは、事業売却で利益が得られることです。

先ほども触れましたが、売却益を獲得できれば売り手は新しい事業にかかる資金を調達できます。

今後の事業プランを考えた前向きな事業売却も、M&Aの有効な選択肢といえるでしょう。

債権者への通知・公告が不要

4つ目のメリットは、債権者への通知・公告が不要な点です。

売り手も買い手も、事業売却の公告や手続きを行う必要がありません。

効率的に手続きを進められます。

必要な事業だけに絞れる

5つ目のメリットは、必要な事業だけに絞れる点です。

数々の事業を抱える会社は、それだけエネルギーを分散させなければなりません。

赤字で業績が良くない事業を事業売却で手放せば、好調な事業に集中させられます。

事業売却を行うときの注意点

M&Aで事業譲渡を検討する際は、メリットだけでなく注意点も考慮しなければなりません。

事業譲渡で押さえておきたい注意点は、以下の5つです。

特に税金面は、正しい知識が求められます。

M&Aの仲介会社への相談も、視野に入れながら進めましょう。

  • M&A仲介会社を利用する
  • 渡益に税金が発生する
  • 妥協範囲を決めておく
  • 売却先を念入りに探す

M&A仲介会社を利用する

1つ目の注意点は、M&A仲介会社の利用です。

事業売却は、多くの場面で専門的知識が問われます。

もちろん、売却先もすぐに見つかるとは限りません。

個人で手続きを進めるよりは、M&A仲介会社の力を借りる方が効率的です。

譲渡益に税金が発生する

2つ目の注意点は、税金です。

売事業売却で得た利益(譲渡益)には、税金が発生します。

売り手は法人税や法人事業税、法人住民税、地方法人税など適切な方法で申告・納税しなければなりません。

買い手は消費税のほか、売却項目に応じて発生する税金があります。

妥協範囲を決めておく

3つ目の注意点は、妥協範囲です。

事業売却をはじめとするM&Aの契約では、当事者はそれぞれの希望通りの内容で取り交わしたいと考えます。

しかし、全ての希望が通るとは限りません。

円満なM&Aを目指したい場合は、どこで妥協できるかあらかじめ決めておくと良いでしょう。

売却先を念入りに探す

4つ目の注意点は、売却先です。

今ある事業がM&Aによって成長するかは、適切な売却先選びにかかっているといっても過言ではありません。

会社にとって、ふさわしい引き継ぎ先を念入りに探しましょう。

事業売却はしっかりとした準備のもと行おう

事業売却は、特定の事業を引き継げるM&Aの方法です。

後継者不在や成績悪化事業を解決できるなどさまざまなメリットがあります。

ただ、手続きが多く、税務面など専門的知識が求められるケースが多くあります。

メリットや注意点を確認の上、M&A仲介会社に相談しながら慎重に準備を行いましょう。

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