M&A後の従業員の退職金や給与はどうなる?会計処理方法から税金まで徹底解説!

M&Aを行うと従業員などの雇用状況などが変わり、退職金について考える必要があります。退職金を活用して、M&Aをより効果的に実施することが可能です。そこで今回は、M&Aを検討している企業に向けて、M&A後の退職金の取り扱いなどについて解説します。

目次

  1. 退職金の主な定義について
  2. M&Aにより買収された企業の退職金
  3. M&A時の社長・役員退職金活用のメリット
  4. M&Aスキーム・株式譲渡と事業譲渡で退職金は変わるか
  5. M&A後買収された企業の退職金会計処理方法と税金
  6. M&A後の社員の雇用と給与はどうなるか
  7. M&A後の従業員の退職金を適切に扱うポイント
  8. M&A後の従業員の適切な退職金処理は専門家に相談しながら行おう

退職金の主な定義について

M&Aの退職金に触れる前に、まずは退職金の定義などについて解説します。退職金と一言でいっても、雇用している従業員なのか役員なのかによって退職金の仕組みも異なります。

その点を踏まえて解説するため、自社がM&Aを行った場合、退職金についてどのような準備が必要になるか考えてみてください。

退職金の定義

退職金は、従業員の退職時に雇用主が支払う仕組みの金銭のことです。

給与などとは異なる区分の金銭のことで、退職金制度を設けている企業であれば、法的拘束力によって支払い義務が生じます。

従業員の退職金

従業員の退職金は、主に以下の3つがあげられます。

  • 退職一時金
  • 確定給付年金
  • 確定拠出年金

勤続年数に基づいて支給されるものが退職一時金です。それに対し、確定給付年金は年金のように特定の金融機関で積み立てていき、運用益が出た場合などに支給する退職金です。

確定拠出年金は雇用している従業員が選択した方法で運用して、運用益が出た場合などに支給する退職金となっています。

役員の退職金

役員の退職金は、法律上雇用している従業員の退職金と同じ方法で支給されます。

しかし、実際のところは退職一時金のみを採用している企業がほとんどです。

M&Aにより買収された企業の退職金

一般的な退職金の仕組みを踏まえ、M&Aにより買収された企業の退職金を解説します。

M&Aの場合も、雇用している従業員・社員と社長・役員とで退職金の支払いが異なる場合が多いでしょう。それぞれの場合に分けて、退職金の仕組みを解説します。

従業員・社員の退職金

M&Aの際の従業員・社員の退職金の仕組みに特に決まりはありません。M&Aの買収側企業が採用している退職金の制度によって変わってきます。

M&Aの売却側企業と同じ制度を採用しているなら、そのまま引き継がれることが多いでしょう。そうでない場合は一度料金が支払われ、買収側企業の退職金制度に入り直すことになります。

社長・役員の退職金

M&Aの際の社長・役員の退職金の仕組みは、M&Aによって退職するかどうかで変わってきます。事業譲渡で役員ごと異動するのであれば、退職金が支払われます。

しかし、事業や雇用している従業員だけ譲渡し、役員は移籍しない場合だと退職金は支払われません。

このときに役員かどうかは関係なく、異動するかどうかで変わる点がポイントです。

M&A時の社長・役員退職金活用のメリット

M&A時に社長・役員退職金を生かすことも可能です。

M&A時に社長・役員退職金を生かすメリットを知っておくと、円滑にM&Aが進めやすくなります。売却側と買収側のそれぞれの退職金を生かすメリットを解説します。

売却側のメリット

M&A時に社長・役員退職金を生かす売却側のメリットとして、事業売却のタイミングで退職金を支払い、純資産を圧縮して株式を譲渡できる点があげられます。

この方法で、株式売却益と役員退職の報酬を両方受け取ることが可能です。退職金の支払いを活用し、手取り額を最大化させることを意識してみてください。

買収側のメリット

M&A時に社長・役員退職金を生かす買収側のメリットとして、買収時の手だし資金が抑制できる点があげられます。

株式譲渡対価の一部を役員の退職金として扱うことで、現金預金などの負担を抑えることが可能です。

M&Aにおける退職金は売却側にしかメリットがないことだと思われがちですが、買収側にもメリットがあることを押さえておきましょう。

M&Aスキーム・株式譲渡と事業譲渡で退職金は変わるか

M&Aにはいくつか手法があり、主な取引方法として株式譲渡と事業譲渡があります。退職金のことを視野に入れたとき、それぞれの取引で退職金の対応がどう変わるか気になる方もいるでしょう。

ここでは、株式譲渡と事業譲渡で退職金がどう変わるか解説します。

株式譲渡

株式譲渡は株主が代わり、会社そのものを売却する際に使われる取引方法です。株式譲渡の場合は、売却代金を受け取った売却側企業の株主に課税義務が課されます。

翌年には、所得税として確定申告する必要があります。退職金がまるまるすべてもらえるわけではない点に注意してください。

事業譲渡

事業譲渡は、事業の一部を買収側企業が売却側企業から買い取る取引方法です。事業譲渡の場合も、法人税として売却代金に課税義務が課されます。

しかし、事業譲渡の場合は法人税とは別に消費税の課税対象となります。買収側企業の消費税分の金額を預かり、売却側が納付を代行するのが一般的です。

事業譲渡の場合は、先ほど触れたように退職金制度を引き継ぐか乗り換えるかで、退職金の支払方法が変わります。事業譲渡に合わせて退職金制度がどうなるか確認し、退職金がいつ支払われるのかチェックしておきましょう。

M&A後買収された企業の退職金会計処理方法と税金

M&A後買収された企業は、退職金の会計処理が求められます。退職金の会計処理を行う場合、主に以下の3つの会計処理が必要です。

  • 退職所得の計算
  • 退職所得控除額の計算
  • 退職金にかかる税金・税率の計算

以下で詳細を解説します。

退職所得の計算方法

退職所得の計算は、「(収入金額ー退職所得控除額)×1/2」で計算可能です。

収入金額は源泉徴収される前の金額で、先に退職所得控除額を計算する必要があります。

役職に関係なく勤続年数が5年以下の方は、収入から退職所得控除を差し引いた額のうち300万円を超える部分については1/2の計算が不要です。

退職所得控除額の計算方法

退職所得控除額の計算は、勤続年数が20年以下か20年以上かによって異なります。

20年以下なら「40万円×勤続年数」で、20年以上なら「800万円+70万円(勤続年数ー20年)」で計算されます。

先にこちらで退職所得控除額を計算すると、退職所得額が計算可能です。

退職金にかかる税金と税率

退職所得が計算できたら、それに税率をかけると退職金にかかる税金が計算できます。

税金の中でも主に所得税と住民税がかかり、住民税は所得金額の10%をかけると計算可能です。

所得税の税率は、以下の表の通りです。

税率に対する所得金額

税率

1,000~1,949,000円

5%

1,950,000~3,299,000円

10%

3,300,000~6,949,000円

20%

6,950,000~8,999,000円

23%

9,000,000~17,999,000円

33%

18,000,000~39,999,000円

40%

40,000,000円以上

45%

税金を計算する際には、上記のポイントを押さえておきましょう。

M&A後の社員の雇用と給与はどうなるか

M&A後の社員の雇用と給与について、気になる方も少なくありません。そこで、M&A後の社員の雇用と給与がどうなるのか解説します。

社員

M&A後の社員の雇用と給与は、勤務地次第で変わります。社員ごと事業が取引相手の企業に移ったとして、その企業で働き続ける場合は転勤扱いとなります。

新しい勤務地での労働条件によって、雇用と給料の状況が決まると考えてください。

もし勤務地変更を伝えられてそこで働けないと判断した場合は、早期退職制度を使用して退職することとなります。

そのまま働かずに退職する選択も取れるため、念のために雇用と給与の条件を確認した上で転勤先でも働くか考えるべきです。

役員

M&A後の役員の雇用と給与は、取引先企業次第で変わってきます。M&Aをする前には役員として重要視されていたとしても、取引先に転勤したら一般の従業員になってしまうことが多いでしょう。

役員としての立ち振る舞いをしていると周りから白い目で見られてしまうケースもしばしば見られています。それだけでなく、給与も大きく下がってしまう可能性も否定できません。

それらの点で働き続けることが難しくなり、辞職してしまう方もいるため、事前に役員の処遇について入念に話し合うべきです。

社長

M&A後の社長の雇用と給与は、相手企業の社長との直接的な話し合いで決まります。例えば、M&A後は会社経営者から事業引き渡し後の業務の橋渡しとなる顧問役になるケースがあります。

とはいえ、引き継ぎ期間が過ぎれば、顧問役も必要なくなってしまうことが多いでしょう。その後のことも含めて、途中で退職するのか何らかの形で働き続けるのかよく話し合ってください。

どちらに転んでも、給与は社長の頃よりもずっと下がってしまうことを覚悟しておくべきです。

M&A後の従業員の退職金を適切に扱うポイント

M&A後の従業員の退職金をM&Aで取り扱う際には、適切に扱うポイントを押さえておきましょう。

適切に退職金を扱うポイントを押さえておかないと、お互いにとって効果的なM&Aが実現しにくくなってしまいます。

M&A後の従業員の退職金を適切に扱うポイントとして、以下のものがあげられます。

  • 税金を考慮する
  • 適切な退職金を算出し支給する
  • M&Aに詳しいM&A仲介会社や専門家に相談する

以下で詳細を解説します。

税金を考慮する

M&A後の従業員の退職金を適切に扱うポイントとして、税金を考慮する点があげられます。税金を意識すれば、税金の負担を抑えることで資金を獲得することが可能です。

売却側企業が退職金も受け取る方法にした場合、退職金に該当する部分には株式譲渡の税率とは別の税率が適用されます。

株式譲渡だと20.315%ですが、退職金だと金額に応じて0%から27.5%となっています。

M&A時であれば、退職金の税率は20.315%を下回ることが多いでしょう。税金を意識した退職金の処理を行うように、話をすり合わせておきましょう。

適切な退職金を算出し支給する

M&A後の従業員の退職金を適切に扱うポイントとして、適切な退職金を算出し支給する点があげられます。適切な退職金でない場合、退職金が損金として認められない場合があります。

企業として形がなくなる場合でも、M&A時の不適切な行為の影響は譲渡先の企業にも響く可能性が高いでしょう。

会計部門に負担を与えることがないように、先ほど解説した税率のポイントも踏まえて正確な処理を心掛けてください。

M&Aに詳しいM&A仲介会社や専門家に相談する

M&A後の従業員の退職金を適切に扱うポイントとして、M&Aに詳しいM&A仲介会社や専門家に相談する点があげられます。企業間だけで話し合いを進めてM&Aを実行もできますが、どこかで正しく処理できていない部分が出てくる可能性があります。

少しでも不安な場合は、M&Aに詳しいM&A仲介会社や専門家に相談してください。

M&A仲介会社などの専門家に相談する場合、実施するM&Aの規模感における実績が多いところに相談するのが理想的です。

単に実績豊富な業者に依頼しても、同じ規模感のM&Aの経験がないと、サポートしてもらっても失敗してしまう場合があります。

M&A仲介会社の実績をチェックし、どの規模感において強みを持っているのか確認するというポイントを押さえておきましょう。

M&A後の従業員の適切な退職金処理は専門家に相談しながら行おう

M&Aを行うとそれに応じて従業員や役員、社長などの雇用や給与の状況が変わります。

そこで退職金処理が関わってきて、退職金の処理を効果的に行うと、手元に受け取れる資金が多くなります。M&A時には、退職金の処理を適切に行うポイントを押さえておいてください。

退職金の処理の仕方も含め、M&Aに対して不安に感じる部分がある場合は、M&A仲介会社などの専門家に相談するべきです。

専門家に相談すればトラブルを起こすことなく、効果的なM&Aが実現しやすくなります。M&Aでの退職金の処理について、気になる方は専門家に相談しましょう。

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